新型コロナウイルス感染症のPCR検査とはなにか|抗原検査・抗体検査の違いとは
新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる方法には、PCR検査・抗原検査・抗体検査があります。それぞれ検査方法や費用、陽性率などが異なるため、仕組みを理解したうえで検査を受けましょう。
とはいえ、「簡単に検査を受けたい」「痛い検査は避けたい」「検査によって何がわかるのかを知りたい」「症状はないけれど陰性証明書が欲しい」など、どのように検査を進めればよいかわからないと感じている方は少なくありません。
まずは、PCR検査の違いや、新型コロナウイルスに感染している恐れがある場合にどのような行動をとればよいのかを把握しましょう。
目次
PCR検査と抗原検査・抗体検査の違い
PCR検査(鼻) | PCR検査(唾液) | 抗原検査 | 抗体検査 | |
検査結果でわかること | 現在の感染の有無 | 現在の感染の有無 | 現在の感染の有無 | 過去の感染の有無 |
検査で検出するもの | ウイルスの遺伝子 | ウイルスの遺伝子 | ウイルスのタンパク質 | 血液中のタンパク質 |
検体 | 鼻咽頭ぬぐい液 or 鼻腔ぬぐい液 | 唾液 | 鼻咽頭ぬぐい液 | 血液 |
判定するには | 専用の検査機器・検査技師 | 検査キット | 検査キット | 検査キット |
検査時間 | 4~48時間 | 4~48時間 | 15分 | 20分 |
精度 | 高い | 高い | PCR検査より低い | 低め |
PCR検査とは
PCR検査の特徴
- 現在、新型コロナウイルスに感染しているか否かがわかる
- 検査で検出するものはウイルス遺伝子
- 健康保険適用には条件がある
- 無症状の場合は自費診療
- 陽性率の精度が高い
PCR検査とは、新型コロナウイルス感染症に現在進行形で感染しているかを調べるための検査です。
PCRは「polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)」の略語で、粘膜や唾液を採取して検査を行います。
具体的には、採取した検体に試薬を加え、専用の装置でウイルス遺伝子を増幅させて感染していないかを検査する仕組みです。
PCR検査は、保険適用もしくは自費診療で受けられます。
保険適用の条件
- 発熱や咳など自覚症状がある場合
- 濃厚接触者
- 接触確認アプリCOCOAで通知がきた場合
- 医師により検査が必要と判断された場合
保険適用によるPCR検査は、指定された医療施設のみ受けられます。
ただし、自覚症状があった場合でも、医師が検査を必要ないと判断した場合は、保険適用にはなりません。
上記の条件に当てはまる方、熱があるけれど新型コロナウイルスかどうかがわからない場合は、かかりつけのクリニックや保健所、帰国者・接触者相談センターなどに相談したうえで指示に従いましょう。
自費診療の条件
- 無症状の場合
- 渡航のために陰性証明書が必要な場合
- 熱や咳といった症状があるが、医師が検査の必要がないと判断した場合
基本的に、自覚症状がなく陰性証明書が欲しい方や、「症状はないけれど、感染していないか心配」という方は、自費診療でPCR検査を受けることになります。
自費診療のPCR検査は、検査を導入している医療機関であればどこでも受けられます。
ただし、完全予約制や指定の時間を設けているなど、クリニックによって検査を受ける際の条件や時間帯が異なるため、事前にホームページや電話で問い合わせておくと安心です。
また、受診時に発熱や咳などの症状がある場合、PCR検査を受けられないこともありますので、その点も理解しておきましょう。
抗原検査とは
抗原検査の特徴
- 現在、新型コロナウイルスに感染しているか否かがわかる
- 検査で検出するものはウイルス特有のたんぱく質(抗原)
- 健康保険適用の条件がある
- 無症状の場合は自費診療
- 陽性率の精度がPCR検査より低い
抗原検査とは、PCR検査と同じく、検査を受けた時点で新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる検査です。
この検査では、鼻の粘膜や唾液を検体として採取し、新型コロナウイルスに対する抗体を用いて「ウイルス特有のたんぱく質(抗原)」を見つけます。
抗原検査には、検体を採取してから30分程度で結果が判明するという検査時間の速さや、特別な検査機器が必要ないというメリットがあります。
一方で、検出には一定以上のウイルスが必要となるため、PCR検査よりも精度が低いというのも特徴です。
そのため、抗原検査とPCR検査を組み合わせて活用されることも少なくありません。
なお、鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査は、発症2日目から9日目までに「陰性」となれば確定診断となります。
症状発症日または10日目以降の場合は、確定診断のために再度PCR検査が必要となるため注意が必要です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
抗体検査とは
抗体検査の特徴
抗体検査とは、過去に新型コロナウイルスに感染していないかを調べるための検査です。
基本的には、現在症状がない方が対象となります。
- 過去に新型コロナウイルスに感染していたか否かがわかる
- 検査で検出するものは抗体
- 健康保険は適用されない
- 自費診療のPCR検査より費用が安い
新型コロナウイルスは、感染しても無症状の方もいるため、知らないうちに感染していたというケースも珍しくありません。
過去に感染していたかどうかを確認したい場合、抗体検査を受ければ、ウイルスに対する抗体の有無を調べられます。
なお、抗体検査に用いられる試薬は、現時点で国の薬事承認を得られていないため、自費診療のみとなっています。
ただし、自費診療でのPCR検査よりも費用が安く、少量の採血により15~20分程度で検査が行える点はメリットといえるでしょう。
抗体検査は現時点で研究段階にあります。そのため、抗検査で陽性となった場合でも、再び感染する可能性はゼロではありません。
「今後帰省や出張の予定がある」、「電車通勤のため感染していないか不安」という場合は、抗体検査を受けることを検討してみましょう。
PCR検査の方法は2つ
PCR検査の方法には、鼻咽頭ぬぐい液による検査と唾液による検査の2つがあります。
2つの検査方法のうち、唾液による検査は2020年6月2日に追加された方法です。
それぞれ検査のやり方が異なるため、特徴を見てみましょう。
鼻咽頭ぬぐい液での検査:医療機関で検査する方法
鼻咽頭ぬぐい液は、検査キットの綿棒で鼻の奥を数回こすって検体を採取します。
鼻の奥から検体を採取するこの方法は、唾液による検査と比べて精度が高いのがメリットです。
しかし、綿棒を深く挿入するため痛みや不快感を覚える方が多く、苦痛が伴うことや、挿入時に思わずくしゃみが出ることもあり、飛沫による医療従事者への感染リスクが高まるといデメリットもあります。
そのため鼻咽頭ぬぐい液での検査を希望する場合は、専用の検査室を設けている、医師や看護師が防護服を着用しているなど、感染防止対策がしっかりと行われているクリニックを選びましょう。
唾液検査:PCR検査キットによる検査方法
唾液検査は、専用の容器に1~2ml程度貯めた唾液を検体として用いる検査方法です。
検査の際は、はじめに数分程度口を閉じてうつむき、自然と唾液が出てきたら指定の容器に入れる、という作業を繰り返します。
唾液検査のメリットは、なんといっても鼻咽頭ぬぐい液を採取するときのような苦痛を伴わないことです。
一方で、鼻咽頭ぬぐい液と比べて唾液に含まれるウイルス量が少なく、検査の精度が若干劣る点はデメリットといえます。
できるだけ検査結果の精度を高めるために、検査の30分ほど前から、飲食やうがい、歯磨きなどは控えましょう。
新型コロナウイルスの感染が疑わしいときの検査の流れ

新型コロナウイルスの感染が疑われる場合、お住まいの地域によって対応が異なります。
ここでは、東京都で行っている検査までの流れを見てみましょう。
- 電話相談
まずは、かかりつけのクリニックや病院に電話で相談を行います。かかりつけ医がいない場合は、「東京都発熱相談センター」で相談を受け付けているため、そちらを利用しましょう。
また、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」で通知が届いた場合は、「東京都発熱相談センターCOCOA専用ダイヤル」が用意されています。 - 受診が必要と判断
医師や東京都発熱相談センターによって、受診が必要と判断された場合、PCR検査センターや新型コロナ外来などへ案内されます。その際、移動手段についてもしっかりと相談してください。
公共交通機関の利用は、感染リスクが高まるため危険です。 - PCR検査で陽性の場合
症状に応じて入院、または宿泊施設での療養となります。 - PCR検査で陰性の場合
自宅で安静、または医療機関を受診となります。陰性であっても、何かしら症状がある場合は、別の病気を発症している恐れがあります。
また、PCR検査の陽性率は100%ではないため、症状がよくならない方は、改めてかかりつけのクリニックや発熱相談センターへ相談しましょう。
新型コロナウイルスの感染が疑われる方は、必ず電話相談をしたうえで医療機関に受診しましょう。
クリニックや病院によって対応方法が異なり、発熱などの症状がある場合は受診を拒否されることもあります。
そのため、事前に症状や状況を相談し、指示に従って行動してください。
症状はないけどPCR検査をしたい方は郵送検査がおすすめ
「症状はないけれど感染していないか心配」「帰省前に念のため検査を受けたい」という場合は、郵送検査がおすすめです。
郵送によるPCR検査は自費診療となりますが、受診や移動の必要がないため感染リスクが減少します。
ただし、検査結果が出るまでに日数がかかることも理解しておきましょう。
また、郵送検査では、陰性証明書の発行が行えないため、証明書が必要な方は医療機関での受診が必要です。
「PCR検査を受けたいけれど移動やクリニックでの感染リスクを考えると不安」、「証明書の発行は必要ないけれど、陰性であることを確認したい」という場合は、郵送によるPCR検査の受診を検討してみてはいかがでしょうか。