「コンジローマは肛門にもできるの?」「痔との見分け方は?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
肛門コンジローマは痔と見分けづらく、放置すると病変の増加や他者への感染リスクが高まるため注意が必要です。
この記事では、肛門コンジローマと痔の見分け方や、治療方法を詳しく解説します。
肛門コンジローマの正しい知識を身に付け、再発・感染拡大の予防に努めましょう。
肛門のコンジローマ(尖圭コンジローマ)とは?
肛門のコンジローマは、尖圭コンジローマとも呼ばれ、性感染症(STD)の一つです。
この感染症はヒトパピローマウィルス(HPV)の感染によって、肛門周囲や肛門内部にイボ状の病変ができます。
一般的に、肛門のコンジローマはローリスク型HPVの6型・11型によって発症します。
肛門のコンジローマは良性腫瘍ですが、放置すると病変が悪化したり、拡大したりします。
稀に、16型や18型などのハイリスクのHPVに感染すると、悪性化するため注意が必要です。
主な感染経路はアナルセックスのような性行為による接触で感染しますが、入浴やトイレの便座から感染するケースもあります。
- 性行為
- サウナや風呂場の椅子
- 便座
- 脱毛サロン
- 感染者とのバスタオルなど共有
特に、アナルセックスによる感染では肛門周辺だけでなく、肛門内部の奥深くまで病変が認められるケースが多く、再発率も飛躍的に高まります。
肛門コンジローマの原因ウイルスは、一度感染すると治療をおこなっても体内から無くなることはないため、感染者との接触や温泉・サウナなどを利用する際は注意しましょう。
痔との見分け方
肛門部分に違和感やイボが発生すると「痔かもしれない」と誤認してしまう方も少なくありません。
日常的によく見られる痔と肛門コンジローマは、どちらも肛門周囲にイボ状の病変を生じるため、自己判断が難しい場合があります。
肛門コンジローマはカリフラワーや鶏のトサカ状のイボが多発し、痛みはほとんどありません。
一方、いぼ痔や痔核などの痔は、通常は単発あるいは数個の膨らみがあり、痛みや出血を伴います。
肛門コンジローマ | 痔(いぼ痔・痔核) | |
---|---|---|
原因 | ・ヒトパピローマウィルス(HPV) による性感染症 | ・便秘や下痢、いきみ ・長時間の同じ姿勢などによる肛門への負担 |
見た目の特徴 | ・小さな突起が多発、カリフラワーや 鶏のトサカ状になることも。 ・色はピンク、白、茶など多様。 | ・通常は単発あるいは数個の膨らみ。 ・腫れたり出血を伴うことが多い。 |
痛みの有無 | ・初期はほとんどない。 ・進行するとかゆみやジメジメ感、 不快感が現れる。 | ・炎症や血栓によって強い痛みを伴うことが多い。 ・出血を伴いやすい。 |
病変の発生 | ・肛門周囲や肛門内部にできる。 ・徐々に増大・融合する。 | ・外痔核:肛門の出口 ・内痔核:肛門の内側 |
肛門コンジローマと痔は原因や治療法が異なるため、自己判断せず医療機関で適切な診断・治療が必要です。
「肛門にできものができた」と感じた場合は、放置せずに早急に医療機関を受診しましょう。
肛門のコンジローマの受診から治療まで
肛門にできたできものがコンジローマかどうかを判断し、適切な治療に進むためには、専門医による正確な診断が必要です。
特に、肛門のコンジローマは自然治癒することが稀であり、放置すると病変が拡大したり、他者へ感染させるリスクがあるため、早期の受診が重要です。
男性が肛門のコンジローマの感染が疑われる場合、以下の受診先があげられます。
- 泌尿器科
- 皮膚科
- 性病科
- 肛門科
肛門のコンジローマはデリケートな部位の病気であるため、受診に抵抗を感じる方もいるかもしれません。
しかし、早期に診断を受けて治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、完治を目指すことが可能になります。
肛門のコンジローマの診断の流れ
肛門のコンジローマが疑われる場合、医療機関ではまず問診と視診によって症状を確認します。
コンジローマの診断は、主に視診でイボの形状や色、できている場所などを確認することで下されます。
特に、鶏のトサカやカリフラワーのような特徴的な形状のイボが確認された場合、コンジローマであると判断可能です。
他の疾患との鑑別や確定診断のために、ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いた検査や、病変の一部を採取して調べる病理組織検査がおこなわれる場合もあります。
また、アナルセックスによる感染が疑われる場合は、肛門内部の診察もおこなわれるケースも少なくありません。
肛門周囲にイボ状の病変を発見した場合、痔とコンジローマの区別は付きにくいため、必ず医療機関にて診断してもらいましょう。
肛門のコンジローマの治療方法
肛門コンジローマの治療は、病変の大きさや数、発生部位(肛門内外)、患者の健康状態などを総合的に判断し、最適な方法が選択されます。
主な治療法には以下の3種類があり、すべてイボを取り除くことを目的としています。
- 凍結療法
- 外用療法
- 外科的治療
医師による診察後、各治療法のメリット・デメリット、再発のリスクについて十分に説明を受けた上で、治療方針を決定することが重要です。
凍結療法
凍結療法は、主に皮膚科で用いられる治療法であり、液体窒素を用いて肛門のコンジローマの病変を凍結させ、壊死させる方法です。
マイナス196度の液体窒素に浸した綿棒を患部に押し当て、数秒間凍らせる処置を数回繰り返します。
凍結時に多少の痛みを伴うことがありますが、麻酔は不要で外来で手軽に実施できます。
通常、1週間〜2週間に1度のペースで、合計4〜5回程度の治療が必要です。
凍結と融解を繰り返すことでイボが徐々に剥がれ落ちますが、治療後数日間は凍傷に似た痛みを伴う場合があります。
凍結療法は小さな病変や数が少ない場合に限って適用されるため、病変が広範囲に広がってしまった場合は他の治療法を検討しましょう。
外用療法
外用療法は、抗ウイルス薬であるイミキモド(ベセルナクリーム)を肛門コンジローマの病変部に直接塗布する治療法です。
ベセルナクリームは免疫能を高め、ウイルスに感染した細胞を攻撃・破壊することでイボを治癒へと導きます。
使用方法は週3回の頻度で塗布し、8週間〜最大16週間ほど塗布します。
塗布後は約8時間後に洗い流す必要があるため、就寝前に塗布するのが一般的です。
外用療法では肉眼では確認できないほどの微小な病変にも効果が期待でき、自宅で塗布できるため通院の負担が少ないというメリットがあります。
一方、効果が現れるまでに時間がかかる点や、塗布部位にかゆみや炎症などの副作用が出る場合もあり注意が必要です。
- 肛門周囲の皮膚炎
- 表皮剥離
- 筋肉痛
- 疼痛
- 発熱
- 浮腫
また、アナルセックスによって感染し、肛門管の内部まで病変が発生している場合は使用できません。
肛門内部にまで広がる病変には、外科的治療を検討してみましょう。
外科的治療
外科的治療は、肛門のコンジローマの病変を物理的に切除または破壊する治療法で、主に電気焼灼・切除・レーザーによる焼灼がおこなわれます。
特に、肛門内部に病変がある場合や、病変が大きくなりすぎたり、外用剤で皮膚障害を起こしたりした場合に適用されます。
外科的治療ではイボの根元まで完全に処理することで高い治療効果が見込めますが、再発を防ぐためには広範囲かつ深部までの焼灼が必要です。
施術には麻酔が必要となり、切除に伴う出血や術後の痛みが生じる可能性があり、肛門管内部のイボ摘出には入院が必要となるケースも少なくありません。
肛門コンジローマの治療の中で、最も患者への負担が大きいため、医師と十分に相談して決定しましょう。
肛門のコンジローマの再発
肛門のコンジローマは、治療によって目に見えるイボを取り除いたとしても、再発する可能性が非常に高い病気です。
ヒトパピローマウィルス(HPV)は一度感染すると、体外から完全に排除されることはありません。
そのため、外科的な切除や焼灼によって肉眼で見える病変を全て除去しても、約30%の確率で肛門コンジローマが再発するといわれています。
治療が終了した後も、体内に残ったウイルスによって再度イボが発生する可能性があることを理解しておくことが重要です。
再発時の早期発見・早期治療につなげるために、治療後半年間程度は3ヵ月ごとに定期的な診察・検査を受けましょう。
再発予防のためにできること
肛門のコンジローマの再発やパートナーへの感染を防ぐためには、感染予防対策を講じることが重要です。
治療期間中の性行為はパートナーへの高率な感染リスクを伴うため、必ず避けなくてはなりません。
また、肛門コンジローマと診断された際は、パートナーも感染している可能性が高いため、一緒に検査・治療を受けましょう。
肛門コンジローマの初期感染予防には、HPVワクチンの接種が有効です。
HPVワクチンには、4価ワクチン(ガーダシル)と9価ワクチン(シルガード9)があります。
シルガードは女性のみ適応しているため、男性はガーダシルを接種しましょう。
また、現在は男性へのHPVワクチンの助成が無いため、全額自己負担となっています。
肛門コンジローマに感染してしまった場合は、パートナーへの感染拡大や、再発防止に努めましょう。
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肛門のコンジローマでよくある質問
肛門のコンジローマはデリケートな部位の疾患であるため、受診や治療に関して様々な疑問や不安を抱える方も多いでしょう。
ここでは、肛門コンジローマに関する、よくある質問を紹介するため参考にしてみてください。
肛門のコンジローマは保険適用で治療できる?
肛門のコンジローマの治療は、基本的に保険適用の対象となります。
凍結療法や外用療法、外科的治療など、標準的な治療方法であれば、比較的費用を抑えて受けることが可能です。
ただし、性病専門クリニックや匿名で治療を受ける場合は、保険適用外となり全額自己負担となる場合があります。
診察は肛門の内側まで見られる?
肛門のコンジローマの診察では、イボが肛門の入り口だけでなく、内部の肛門管にまで及んでいる可能性があるため、肛門の内側まで診察する場合があります。
特に、アナルセックスによって肛門コンジローマに感染した場合、肛門内部まで病変が発生するため肛門の内側まで診察します。
まとめ
肛門のコンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発生する性感染症の一つです。
痔との区別が難しいため、肛門周りにイボのようなできものを見つけたら、自己判断せずに速やかに皮膚科や泌尿器科、肛門科などの専門医を受診しましょう。
治療法には凍結療法、外用療法、外科的治療などがあり、イボの大きさや状態に応じて選択されます。
肛門コンジローマは治療後も再発の可能性があるため、コンドームの使用や免疫力の維持など、日々の予防策を講じましょう。
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